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最高裁判所第一小法廷 昭和43年(オ)39号 判決 1968年7月09日

上告人(被告・控訴人) 三和商事株式会社

被上告人(原告・被控訴人) 石原宏

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

所論出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項の規定が、日歩三〇銭をこえない利息の約定または賠償額の予定について利息制限法の適用を除外する趣旨でないことは、当裁判所昭和三三年(オ)第二〇七号、同三四年五月八日第二小法廷判決(民集一三巻五号五七一頁)の示すところによって明らかであって、利息制限法一条二項も所論のような趣旨を定めた規定ではない。そして、債務者が、同法一条および四条所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払ったときは、右制限をこえる部分は民法四九一条により残存元本に充当されるものと解すべきもので(当裁判所昭和三五年(オ)第一一五一号、同三九年一一月一八日大法廷判決、民集一八巻九号一八六八頁)、右の理は所論のように弁済期までの利息を一括して支払った場合であると否とによって異なるものではない。また、原審の確定した事実関係のもとにおいては、本件手形(昭和四〇年八月二五日被上告人振出のもの)は、被上告人が昭和三九年六月二二日上告人から借り受けた金五〇万円について、その弁済期を猶予し、支払を確保する趣旨で振り出されたもので、かつ、被上告人の上告人に対する右手形債務および前記五〇万円の貸金債務はすでに消滅して存在しない旨の原審の判断は正当である。したがって、原判決には何ら所論のような違法はない。なお、論旨中原判決の違憲をいう部分は、ひっきょう、原判決の法令違背を前提とするところ原判決に違法のかどのないことは前示のとおりであるから、所論は前提を欠くものである。論旨はすべて採用することができない。<以下省略>

(裁判長裁判官 飯村義美 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄)

上告人の上告理由<省略>

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